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第5回
リアリティとは、等身大の自分自身を忘れないこと」
ゲスト/kimica(キミカ)さん
著作/『Girl friend』

今回のゲストは、「富士山がよく見えるところ」にお住まいのkimicaさんです。
小説と並行して絵と写真などアートな活動も続けているという根っからのクリエイター。繊細かつ大胆、素っ気なさを装いつつサービス精神全開――テキストとビジュアルが融合するkimicaワールドを、ご自身のサイト「NOCOMPLEX」で展開しています。
以前、「閑々随筆」の「イメージの時代」で取り上げた作家こそ、kimicaさんのことでした。文章と映像を自由にクロスさせることができるkimicaさんの感受性と創造力の秘密に迫ります!(迫れるのか?)
事前リサーチと取材をもとに構成しております。




〈その1〉 創作活動から得られるもの

Web Publishing AZUSA(以下――) ご存じないかと思いますけれど、kimicaさんはサイト化初の利用者なんですよ。

kimica どういうことですか?

 ――以前から小説の講評をよく頼まれてましてね。もちろんオフラインでですよ。知り合いの知り合いの知り合いとかが、原稿を送信してきたり持参したりするのを見るにつけ、需要はあるんだなあ、と。出版不況と言いますが、書き手は増えてますよね、確実に。

kimica ネットのせいもあるのかな。

 ――ええ。このインタビューの1回めでも陶さんがそんなことをおっしゃってました。作品を発表する場が開けましたよね。でも、気持はあるのにうまく書けないという人もまた多い。そこで、2003年の2月から準備を始めて、5月にWeb Publishing AZUSAをサイト化したんです。kimicaさんはその第一号というわけ。ご案内のメールを送るためにkimicaさんの「NOCOMPLEX」にお邪魔したんですが、ビジュアルに凝ってらっしゃるようだったので、お呼びじゃないかなと思いました。

kimica とんでもない(笑)。コンテンツは最初、ことば――詩と日記だけだったの。小説、絵、写真って増えてったけど、メインはやっぱり文章だから。

 ――サイトをつくったきっかけは?

kimica 高校を卒業した年の夏に自分専用のパソコンを買ったことかな。その頃、テキスト系って呼ばれるサイトにはまってて、ついでにって感じで。

 ――絵が描けたり、写真が撮れたりっていうの強みですよね。オリジナルなデザインができるし、素材も自分でつくれるし。テキスト、ビジュアル、それぞれに対する姿勢は違うものなんですか。

kimica 小説も絵も写真も同じで、きっかけも得るものも違いはないと思う。

 ――ちょっと待ってくださいよ。きっかけも同じって……?

kimica それぞれに手を出すまでの経過って言うのかな。ちっちゃいときからとにかく絵を描くのが好きで、漫画を描きはじめたのが小学校二年くらい。そのとき一緒に描いてた友達が小説を書きはじめて、触発されて書きはじめたのが……中学入ってからかな。だから漫画……絵の延長上に小説があるの。
 でもやっぱり絵の方が好きで、本編より挿絵とかに力が入ってる。周りに何かしらそういうの好きな子がいたけど、わたしはいつもうまいほうだと思ってた。絶対わたしのが一番おもしろいとか思ってて(笑)。絵は自信があったし、ずっとやってたしね。

 ――なるほど。絵も小説もキャリアとしては長いんですね。

kimica 高校入ってからは書くこと自体が減ったんだけど、初めて自分よりうまいって思う子が現れて。その子に負けたくなくてすごく書き込むようになったかな。表現とか構成とか、小説のおもしろさに気づきはじめて。
 絵はずっとわたしの中では上位にあるんだけど、小説はだんだん上がってきた感じ。
 小説書くときも頭に常に映像があるし、全部がひとつに繋がってるっていうか……。

高校の頃書いた小説の一部(!)。横書きでびっしり

 ――それじゃあ、違いなんてのはどうですか?

kimica 時間がかかったり頭使ったりでいうと、できたときのじんわりした喜びみたいなのは小説が大きいかな。
 絵は昔から当たり前のように描いてたし、写真は一瞬のものだし。
 やっぱり一番作ってる感じがするのは小説だから。

 ――時間も労力もかかりますよね、書くっていうのは。でも、kimicaさんはビジュアルにもことばをつけてますよね。

kimica 描いたり撮ったりだけじゃ物足りなくなっちゃうんだよね。やっぱり何かことばをつけたくなってつけたりとか。
 ビジュアルにことばを入れたくなるのも作りこみたいって気持があるのかもしれない。じんわりと、いいものできたなぁっていう。

 ――そこまで手を入れてもらって、絵も写真も幸せですね。小説、絵、写真すべてがkimicaさんの創作の対象になっているわけですが、そんな活動から得られるものって何ですか? いきなり核心に入っちゃったけど……。

kimica 簡単に言えば自信かな。それと満足感とか達成感。自己満足とも言うけど。



独りよがりにならないように

 ――何をおっしゃいますやら。「NOCOMPLEX」に公開されてる作品からは、ぜんぜん自己満足の匂いなんかしてきませんよ。個性はびしばし伝わってきますけど。

kimica 伝わってますか?

 ――もちろん。等身大のkimicaさんが見えてきますよ。ああ、こんな人なんだなっていうか……。

kimica ホント? やっぱり「kimicaらしい」って言われるのがいちばんうれしいの。

 ――単にことばを並べたり、絵や写真を掲載しただけでは、あのテイストは出ませんよ。自己満足というより、自己表現ができてるんじゃないかなあ。コンテンツを増やす予定はありますか。

kimica ないです。小説、絵、写真――すべてがひとつに繋がるから、コンテンツがどうとかって感じじゃないんだよね。kimicaとして、「NOCOMPLEX」としてのスタイルが今のサイズなんだと思う。

 ――反応という面で、コンテンツごとの差はありますか。

kimica 違いはほとんどないかな。
 眼で感じるかことばで理解するかの違いだけで、見る人も同じ想いで見てくれてるみたい。
 ありがたいです。

 ――淡々と話してますけど、作品にはけっこう気をつかってるでしょ?

kimica 独りよがりにならないように注意はしてる。

 ――やっぱり。kimicaさんの小説を読んですぐわかりました。短いパラグラフが特徴ですが、ことばがよく練られていますよね。

kimica あ、うれしい(笑)。ありがとうございます。
 あとは暗い部分と違う部分のバランス。暗さばかりが引き立たないようにことばを選んだり。痛みや傷はもう十分。
 それよりも主人公を見てほしいから。

 ――いいことばですね。

kimica 痛みとか傷とか少し前に流行ってたけど、今も流行ってるのかな?

 ――大阪の事件をきっかけに、マスコミでゴスが取りざたされてますね。痛みや傷にフェティッシュな感情をいだく人をゴスと言っていいのなら、ずっと流行ってるみたいですよ。定着してるみたい。

kimica やっぱりそうなんだ。ずっと気になってたんです。痛々しいだけの文章は人の心に響かないと思う。痛みや傷を知らない人が、そういう世界を書かないでほしい。そういう世界に慣れないでほしいと思います。

 ――なるほど。誰もが自由に発表できるようになったことの功罪でしょうかね。オンライン文芸の現状にかんして、思うところがあるんじゃないですか。

kimica 自由になったかなって思う。誰でも書けるって意味でも、自分で成長するしかないって意味でも。表現方法も広がったし。
 でも少し危なっかしいなって感じがするかな。固まってないっていうか。
 飲み込まれないようにしようってのは、よく思う。



〈その2〉 連作にして大正解

 ――さて、いよいよ『Girl friend』の創作秘話などをうかがいましょう。ネタばれはなるべく避ける、という方向でひとつよろしくお願いします。では、まず着想について。

kimica ひとつひとつは、サイトに載せていたばらばらの話。それをまとめました。

 ――え、そうなんですか? 最初から連作というスタイルを狙って書かれた作品じゃないんですね。

kimica 最初は「悲しい人」だけのつもりだったの。構成というか、過去とのフラッシュバックが気に入ってたから。
 でもこれだけだと短すぎと思って、じゃあ同じ空気を持つ話を集めたらおもしろいんじゃないかなって。
 とりあえず女子高生を描いた最近のものを全部上げたらあの6個で。詩みたいなのもあるし書き方もいろいろなんだけど、空気がつながると思って。これでいこう! と。

 ――6作品の空気というかテイストというか、それが自然につながってますよね。だから連作向けに書かれたものだとばかり思ってました。短篇集にすることもできたのに、なぜ連作という方向を選んだんですか。

kimica いくつかを並べることでいろんな方向から見えるものがあるんじゃないかってことかな。
 それぞれの話は全く関連がないけど、どんな状態でもそれがわたしから生まれたってことには変わりないよね。そういう意味でテーマはひとつだと思ってる。それは今回の6作だけじゃなくて、わたしが書いてきたすべての話に言えることだし。
 それに気づいたときに、ひとつを置くよりも逆にまとまりが出て方向性が見えやすいんじゃないかって思ったの。
 最初はページ数のためだったけど、いざ並べてみたときに、まるで連作のために書いた作品みたいに思えたよ。

 ――ところで、『Girl friend』の各話にモデルは存在しますか?

kimica 自分の頭に住んでる子たちって言うとわかりやすいかな。モデルっていうか、自分の分身みたいな感じ。
 もちろんわたしに似てるってわけじゃないけど、彼女たちの言動はわたしに通じるものがあると思う。わたしを知ってる人が読んだら「kimicaの世界だね」って言うような。
 わたしがいた世界や思い出とか、見てきたり感じてきたこと。その中で生まれたそれぞれの女の子たちです。

 ――それにしてはベタつかず、人物がひじょうに客観的に造形されているようです。しかも一人称で。最初から一人称で行こうと考えてたんですか。

kimica これも自然に。今も言ったように、自分の中の子たちだからかな。
もちろん入り込みやすさとかもあるんだけど、それは結果。
 こうしたいから一人称、てのはなくて、自然に決まったスタイルです。

 ――6作品すべての主人公が女子高校生ですよね。一人称を用いながら書き分けるのは大変だったんじゃないですか。

kimica 初めから連作を書こうと思って始めていたら似通ってしまったかもしれないけど、それぞれを全く違う状態で書いたから、独立した女の子たちが生まれたと思う。

 ――6作品の順序はすぐに決まりました?

kimica 大前提としてあったのが、「悲しい人」に手を加えることは考えられなかったということ、そして「悲しい人」にどう辿り着くかということ。
 でもそれで終わりだと止まっちゃう気がして、何か余韻を残したかった。彼女たちにはそれぞれの先の生活があるから、光が射すような終わり方にしたかったし。だから、ラストの「明日」はもう最初からあの位置。
 あとは結構流れるように、自然に決まったかな。一番しっくりくる順番になったと思う。

 ――それぞれの先の生活がある……か。登場人物に対する作者のまなざしの質が読後感を左右しますね。ハッピーエンドうんぬんとかの見かけ上の問題じゃなくて、救いというかあたたかさとでもいいますか。人物造形にリアリティがあるだけに、突き放されたんじゃつらいものがありますもんね。



構成は、書きながら考える

 ――ところで、このリアリティはどこから来てるんでしょう? 観察眼を磨け、なんてよく言われますが、いかがですか。

kimica 主人公は自分の分身みたいなもんだし、周りの人たちってのは多分自分の周りにいる人たちだから、特に苦労はないかな。
 人物像はセリフとか行動とかで自然に決まってく感じ。あと名前のイメージとか。

 ――それでは、人物だけではなくて作品世界にかんするリアリティについてはどうですか。心がけていることとか……。

kimica 日常を妥協しないこと。自分のありふれた日々を大切にすることかな。泣いて笑って怒って、仕事して恋をして。等身大の自分自身を忘れないこと。

 ――しかし題材によっては、リアリティを出すために取材や資料収集が必要になることはありませんか。

kimica ……取材が必要なものは書いたことないかな(笑)。
 わたしが書くのはほとんど自分が経験した世界だから、日記を書くみたいにすらっと書いちゃうことが多いの。知らない世界は自分が自信を持って書けるまで待つと思う。

 ――おもしろそうな話が聞けそうですから、ちょっと作品の話から離れますね。作品の着想についてなんですが、どんなときに浮かぶんですか。

kimica けっこういつでも。仕事中とか寝る前とか。歩いて出かけるときも多いかな。多分いろんなところに目がいくからだと思うけど。
 お風呂とかトイレも多いね。水の音のせいかな。

 ――水の音! 特定の音に刺激されるという話は初めて聞きました。で、何かが浮かぶんですよね。テーマですか、ストーリーですか。

kimica だいたい浮かぶのは最初の1行だったりワンシーンの映像だったり。
そこから広がるときは広がるし。
 例えば「悲しい人」なんかは、俯いて口拭ってる女の子が頭に浮かんでその上に「麻痺してる」ってことばが浮いてて、それがきっかけでできた話。そのシーンはラストの2行なわけだけど。
 話によっては最初だったり途中だったりで、そこにどうやってたどりつくかで話が広がってく感じ。

 ――浮かんだことばや映像は、やっぱりメモするんでしょ? お風呂でひらめいたらたいへんだ。

kimica 結構ほっとくことが多い(笑)。もったいないとも思うんだけど、ずっと強烈に残るものは残るから。そこからすごくいいものができれば満足。
 だから気になるのは仕事中でもメモしとくかな。んで一回書き出すとどんどん出てきたりするから、紙いっぱいにつらつら書くの。けっこうそのまま使ったりする。

 ――つらつら書く……って。構成はどうするんですか?

kimica ほとんど固めない。固めてからだとどうしてもことばに詰まっちゃってなかなか書き進まないの。書いてるうちに固まってくっていうか、行き当たりばったりだね。
 さっきのワンシーンが浮かんでそのまま書きはじめてできあがったりとか。だから逆に、途中まで書いてそのまんまってのもけっこう溜まってる。

 ――すらすらのときはともかく、途中で引っかかったときはどうします?

kimica 自分の頭の中で収拾がつかなくなったときだけ、構成を箇条書きにしてみるかな。



〈その3〉 勝手に動き回る登場人物に閉口

 ――『Girl friend』に収録されている6話はすらすらタイプ? 箇条書きタイプ?

kimica 今回の作品はどれも頭でまとめる前に手が動いてたようなものばかりです。

 ――なんか、すごい話ですね。即興にちかいスタイルであれだけ書けますか、ふつう? 場面転換やセリフもどんどん浮かぶんですか。

kimica すべての登場人物が勝手に動いたって言っていいのかも。
(※〔 〕内はネタばれ箇所。作品既読のかたのみ文字反転してください。)
 〔ただ、わたしの予想に反したのは「狂」のサヤ。ミサキ(主人公)に嫌がらせをしてるのはホントはぜんぜん違う生徒だと思ってた。
 のに、書いてるうちに「え、これってサヤがやってるの?」みたいな。

 マニキュアをこぼすシーンで曖昧だった構成が崩れて、一瞬ですべてがまとまった感じ。

 ――で、すいすいといったわけですね。苦労はあまりなかった?

kimica ありました。それも全話。第一、みんな勝手に動きすぎ(笑)。特に「countdown」「眩暈」「獅子唐」かな。
 話が短くてことばも少ないから、彼女たちが何を感じて本質はなんなのかとか。見極めるっていうか、誤解しちゃいけないと思って。彼女たちを理解してことばを選ぶのに時間かかった。納得のいくまで推敲もしたし。

 ――決定稿があがったときの気持を表現すると?

kimica うれしかった。このうえない達成感。納得するまでやってよかったなって。

 ――Web Publishing AZUSAのライブラリー収蔵が8月でしたから、決定稿完成から3か月ほどになりますね。手を入れたい箇所など出てきたんじゃないですか。

kimica 今のところはないかな。ベストな状態だと思う。もう少し時間が経ってわたしも成長したら、また変わるかもしれないけど。

 ――今回の作品を“女子高校生篇”として、“OL篇”“母親篇”というふうにkimicaさんの年齢や成長とともに『Girl friend』が続いていくとおもしろいだろうなあ。……いや、これはわたしが勝手に言ってることなんですが。
 では、『Girl friend』読者へのメッセージをお願いします。

kimica わたしの大切な景色をめいっぱい詰め込みました。ワンシーンでも、読んだ方の大切な景色が浮かべばいいなと思います。



最初は真似でもいい

 ――さて、さっきちょこっとお話が出た、創作に対する姿勢についてうかがいます。ほかの作家のこととか、みなさん、けっこう気になるみたいですよ。では、執筆環境からお願いします。

kimica 書くのは自宅の自室。マシンはSOTEC。

使用しているパソコンとコンビニフィギュアたち

 ――執筆専用ソフトはワープロ? エディタ?

kimica サイト上にそのまま載せるから、ウェブページで書いてます。

 ――あの、ちょっと話はそれますが、最近、編集部で縦書きと横書きについて話し合いました。明快な結論を出しがたい奥深さで、すっかり疲れてしまいました。サンプルの数が少なかったのも災いしたのかもしれません。そこで、ウェブページに横書き入力で小説を書いていらっしゃるkimicaさんに質問です。
 日本語を読み書きする際、縦書きと横書きの差を意識しますか。

kimica 書くときは横書き。読むのはどちらでも。縦書きを見るとホッとするのは確か。

 ――なるほど。余計なこと訊いてすみませんでした。では、続けます。ウェブに直打ちの前はどうでした?

kimica ずっと手書きだった。そのほうが話が広がったり、達成感も強くて好き。

 ――ジレンマですね。ウェブ掲載前提の執筆は。ところで、これがないと書けないという道具とか什器とかありますか。

kimica 特にありません。どんな環境でもイメージでことばは浮かびそう。しっくり座れる場所と自分がいればじゅうぶんです。

 ――要は創造力と想像力ですな。執筆に入るとき、どのようにしてテンションを高めていますか。

kimica テンションを高めるっていうか、好きな人が書いた文章を読むと書きたくなる。じんわりことばが沁みて自分のものになってく感じ。

 ――ちなみに、影響受けた作家を教えてください。

kimica 山田詠美からはリアル。三島由紀夫からは綺麗な文章。茅野泉の教室の風景は今のわたしを作ったかなって思う。虜です。
 あとはけっこう漫画家さんが多いかな。いくえみ綾や聖千秋、やまだないと、松本大洋も大好き。ああいう世界を文字にしたい。

 ――渋いところを攻めてますね。kimicaさんが小説を書きはじめたのは中学生の頃でしたよね。どのように文章の勉強をしたんですか。

kimica なんでもそうだけど、最初は人の表現真似したりとか、だんだんいろいろ試すようになったり。長く書いてれば自分なりの表現方法ってのは見えてくると思う。

 ――その表現方法ですが、作品によって文体を意識的に変えたりしますか。

kimica 話の内容によって、柔らかさとか重さとか、ふさわしいと思った文体を選びます。

 ――書けない、あるいは書く気がおきないときはどうしてます?

kimica 自分のサイトか人のサイトを時間をかけて見る。それでも書く気がおきなかったら書かない。関係ないことに没頭します。


kimicaさんの生活に欠かせないCDたち



〈その4〉 表記へのこだわり

 ――オンライン小説を読んでいて、ちょっと気になるのが漢字の多さです。パソコンだったらかな漢字変換も一発ですから、ついついキイが滑ってしまうのかな? その点、kimicaさんの小説の字面はかなと漢字のバランスがとれていて読みやすい。漢字の使い方で気をつけている点などありましたら……。

kimica 「事」や「物」みたいに、イメージがつく漢字は使わない。逆に「おもう」とか「かく」みたいに、しっくりくる漢字があれば多いに使う。自分が読めない字は却下。

 ――自分が読めない字は却下っていうのは盲点でした。日本語入力ソフトというのは、本人が書けない字はもちろん、読めない字まで出しちゃいますからね。なるほど、自分が読めない字は書かないというのはシンプルでクレバーな判断です。これ、「閑々随筆」のネタにさせていただきます。
 他のオンライン作家の作品を読むとき、どんなところを見ていますか。

kimica 表現の仕方とか、セリフ回しとか。入り込むきっかけがあればすらすらっと読めるけど、引っ掛かりがなければ冒頭だけで読むのやめる。

 ――シビアですけど、正論ですね。小説は書き出しの3行が勝負というのは、オンラインであろうが書籍であろうが変わりません。
 みずからもサイトで小説を発表し、他のオンライン小説も読んでいらっしゃるkimicaさんから見たオンライン文芸の可能性とは?

kimica 書く人次第じゃないかな。上を目指せばどこまでも目指せるし、自分で見切りもつけられるし。そういった点で、文章を書くってことに挑戦しやすくなったかなって。
 ただ見失いやすくもなったから、自分の書くものとちゃんと向き合ってかないとね。

 ――そこがむずかしいんですよね。もう少し、噛みくだいて説明してください。

kimica 期待に応えようとはしないで、自分のペースでやれたらきっといいものが書ける。でも自分を成長させることも忘れないで、自分の表現方法を見つけていけたらいいよね。
 あと、これは、これから小説を書いてみようと思ってる人へ。
 難しい表現なんてしなくても、その時その時の正直な文章が人の心を揺らすと思うよ。



クリエイティビティ

 ――そのとおりですね。無から有を創り出すというのは、肩に力が入るもんです。でもそれが枷(かせ)になってしまう。kimicaさんのアドバイスに、ほっとしている人も多いことでしょう。
 ところで、小説、絵、写真というふうに、kimicaさんはいろんなクリエイティブの表現方法をとっていらっしゃいます。それぞれのモードにはどのように入っていくんですか。

kimica 文字で表現するときは、ひとつのことばが思い浮かんだとき。そこからどう展開してくかはそのとき次第っていうか。絵を描くときは、描こうと思って描きはじめる。写真は見せたいって気持から、それぞれ自然に。
 ことばは視覚を刺激されて浮かぶんだけど、ことばから絵や写真をってことは少ないね。
 そう思うと写真や絵はことばのためにやってるのかもしれないな。

 ――ファインダーを覗いていてことばが浮かぶこともあれば、イラストに色をつけているときにストーリーが浮かぶこともあると思います。それぞれが緊密に結びつき、創造力を高めてくれる瞬間というのは、どんな感じなんですか。

kimica なんか、内側が熱くなる感じ? 興奮して手は止まらないんだけど、すごく冷静に仕上がりを見つめてるっていうか。頭の中で、すべての線が遠くで結びつくの。面白いくらいに手が動いて、ひとつにまとまってく感じ。

 ――アイデンティティを実感する瞬間なんでしょうね。「kimicaらしさ」を強く感じる幸福な一瞬。それが、クリエイティブの醍醐味であり魅力であるのでしょう。
 では最後に、kimicaさんが到達したい文章――ことばの理想を教えてください。

kimica 理想は、リアルな映像。難しいことばを並べるのと文章の質とは違うと思ってて。話に入り込んでリアルを感じるのは、入り込みやすい文章とリアルなセリフかな、わたしの場合。
「教室」っていう一言でその人の教室は感単にイメージできるし、それで十分。机の数とか壁の色とか、必要なければ書かなくていいんじゃないかな。大事なのはそこに誰がいて何が起きたか。
 自分の知ってる教室と知らない教室があってもいいと思う。読んだ人それぞれの教室の中の話が、一番リアルでわかりやすいし。その人だけの映像を作り出せる文章を書きたい。

 ――本日は長時間、ありがとうございました。

kimica どういたしまして。


中学の頃衝撃を受けた『教室』(茅野泉・著)。お気に入りのブーちゃんライター



kimicaさんは「成長」ということばをよくおっしゃっていました。文章、絵、写真の腕とセンスだけでなく、自分の内面的なものも含めての成長をもさしているようです。

自分の成長に役立たないと判断したものはすっぱり切り捨てるという潔さもkimicaさんの魅力。大手のオンライン文芸検索サイト(複数)からリンクバナーを一気に下ろしたという豪快な決断も、真摯な姿勢の証でしょう。

kimicaさんの現在の理想には、あんがい早く到達できるような気がしてなりません。しかしそのときには、すでにより高い理想を掲げているのでしょうけどね。こういうかたがたがオンライン文芸の牽引力となっていくのでしょう。


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