●2010年10月


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ライフワーク、見つかる。 10月26日


 もともと飽きっぽい性格のせいか、なにかにこだわりつづけることもなく馬齢を重ねてきました。
 だから、趣味に生きる人を見るとうらやましい。ライフワークのある人生は充実そのものですな。

 私はといえば、単なる生活習慣があるだけ。それも、たばこと酒。たばこは日に10本ほど。寝酒に焼酎の湯割りをグラス2杯。
 それをずるずると30年も……。しばし茫然としてしまいました。
 しかも、リラックスするために吸い、深い眠りを得るために飲んでいただけで、味わってはいなかったことにも、今さらながら気づきました。

 これって一種の薬物中毒?
『レクイエム・フォー・ドリーム』の世界にまっさかさかも……。

 どきりとしましたね。
 そのとき、習慣を変えてみようかという考えが芽生えました。
 ダメモトという軽い気持で、七夕の日からたばこをやめてみました。
 健康のためとか節約のためとかの理由づけをしなかったぶん、私の生活からたばこは自然にフェイドアウトしました。
“根性禁煙”というやり方らしいですが、強い意志はいりませんでした。離脱症状もきつくはなかったのですが、2週間ほどは仕事に差し支えるほど眠かった。これにはまいりました。
 ただ、リラックスと喫煙はほとんど関係がないということがわかったのは収穫でしたが。

 さて、次はアルコール。
 買い置きを飲んでしまってからと思っているうちに秋が来てしてまい、お湯割りがうれしいこと。
 といっても、やはり習慣であることに変わりはなく、味よりも喉越しを楽しんでいるんですね。
 ストックがなくなると同時に、寝酒も終了。
 寝つきがわるくなるのかと心配していましたが、杞憂でした。すぐに眠れるし、眼ざめも最高。

 たばこにしろ酒にしろ、薬物の効能が味わえなくなるということより、習慣が断たれてしまう不安のほうがプレッシャーになるような気がします。
 日常生活にぽっかりと空いた穴を埋めることができるのか、という恐怖にも似た気持。

 しかし、案ずるより産むが易し。ダメモトでいいじゃありませんか。
 よく、決心を鈍らせないために周囲に宣言する人がいますが、あれは、むやみにやらないほうが吉。
 とくにええかっこしいの人は要注意です。失敗でもしようものなら、心理的なダメージはハンパないですから。
 ほとんど成功、という段階まで辛抱強く待ち、おもむろに、「実は……」と控えめに公言すれば好感度UPは間違いなし。

 生活習慣を見直して、ちょっと得したことがあります。
 私の場合は、匂い。
 たばこをやめてから、嗅ぎ分けられる匂いの数が確実に増えたようです。

 散歩していると、街には街の、田園には田園の匂いがあるんですね。
 とくにこの季節。稲刈りを終えたばかりの田圃から立ち上る、稲と陽光が入り混じったやわらかい香りは故郷の秋の匂いを思い出させてくれます。
 とっくに失われたと思っていたのは、単に私の嗅覚が鈍っていただけのことでした。

 何かをやめれば、何かが得られる。
 失うばかりが人生じゃないってことを、この齢になって気づいただけでもラッキーでした。
 禁煙・禁酒をライフワークにするのもいいかも、と考えている今日この頃です。




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