●2008年11月


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マンガと漢字 11月18日


 これ、読めますか。

「遅せーよ!」

 おそせーよ? ちせーよ? うーん……などとわざとらしく首をかしげることもありませんね。
 おおかたの答はたぶん、「おせーよ!」。

 電車待ちのサラリーマンが読んでいた少年コミック雑誌に、くだんのセリフがありました。大きなコマだったので、肩越しに目に入ったのですが、一瞬、何と書いてあるのか理解できませんでした。
 そこはコミック雑誌。しかも少年向けなので、総ルビ。だから読めました。「おせーよ!」だそうです。

「遅」に振ってあるかなは、「お」。いつからあの字の語幹の読みは、「お」になってしまったのか。
 それほど漢字を使いたいのなら、「遅ーよ!」として、ルビは「おせ」にしたほうが、まだ素直に読めるのではないかと思う。
 マンガ家なり編集者なりが、かなだけでは読者が読みにくいのではと親切心を起こしたまではよかったのですが、見た目のインパクトを優先するあまり、「せ」を送ってしまったのでしょう。
 まさか、いい大人が「遅」を「お」と信じ込んでいるわけではありますまい。

 しかしここまでくると、宛字というよりも半分正解・半分間違いといった厄介なものですから、読者層のメインである子供にとっては迷惑千万。
 私もそうでしたが、子供というのは、マンガを読みながらかなりの数の漢字を覚えるものです。
 マンガの漢字は、学年別漢字配当表に縛られているわけではありませんから、小学1年生でも、小学3年生で習う漢字(兄、船、妹など)が読めたりするのです。なお、例を引いたものは、1958年から1967年まで使用されていた配当表内漢字の一部。歳がバレますな。

 べつにマンガが教育の一翼を担うべし、と言うつもりはありません。しかし、ウソを教えちゃいけない。
 マンガはビジュアルとテキストによって成り立つものですから、どちらが偉いというものでもありません。絵と同じくらい、文字にも気をつかうべきでないか、と昼下がりのホームで考えたしだいです。

 それにしても、なかなか電車が来ません。おせーよ、まったく。

 ね、漢字じゃなくってもわかるでしょ。




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