●2008年7月


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黙ってすわればピタリと当たる。 7月31日


 識別ICカードなしでは、成人といえども自動販売機でたばこが買えなくなって丸々ひと月になろうとしています。
 これがかなり不評だったようで、今月4日にはタスポ不要のたばこ自動販売機が財務省に認定されました。
 顔の皺や骨格、目や鼻などのパーツの位置で成人かどうかをその場で見分ける能力を持つそうなんですが、極端な童顔・老け顔にも対応できるのでしょうか。
『岸和田少年愚連隊 カオルちゃん最強伝説』シリーズの村山カオルなら簡単に買えてしまいそうです。
 いや、カオルちゃんなら別のアプローチでいくような気がしますが、それはまた別の話。

 顔を見て年齢まで当てられなくても、世代はだいたいわかりますよね。
 その世代の名前の傾向というものがありますから。名前を聞くと、さらに判別の精度が上がります。
 そのときどきの花形スポーツ選手やタレントの名前をそっくりいただいたものや、一字だけもらったものなどいろいろです。

 小説の登場人物のネーミングについての相談を受けたりしたときは上のようなことを引き、名前もリアリティ醸成のポイントだということを説明していますが、実は、それっぽい名前をつければいいというものでもないんです。

 そこには、「人名用漢字」という大きな壁が立ちはだかります。

 1947年12月31日までは、名前に使用する漢字に制限はなかったのですが、翌年1月1日に施行された新戸籍法で、「命名に用いる文字は当用漢字の範囲内」と定められてしまったのです。1946年に制定された当用漢字1850字からしか選べなくなりました。

 今では当たり前に名前に用いられる、吾・奈・祐・聡・肇すらなく、かなり不評だったようです。そこで、1951年5月に92字、1976年7月に28字、以降ちびちびと増やしたあげく2004年9月27日に488字と許容字体205字をどーんと追加。

 これでおわかりになったでしょう。ありえない名前という問題が出てくるのです。

 2008年7月の沖縄が背景の物語を考えついたとしましょう。
 主人公は琉太、12歳――もうこの段階でアウト!
 なぜなら、「琉」という字が人名用漢字に追加されたのは1997年12月3日ですから、琉太は11歳でなくてはならない。

 まさに、蟻の一穴。文字ひとつでリアリティが崩れてしまうこともあるんですね。
 しかし、藝名、筆名、通名、偽名、コードネームのたぐいなら、それほど細心の注意をはらう必要ないでしょう。筆名にいたっては、インパクトと覚えやすさが勝負ですから、大胆に行きましょう!

 ――あ、ちょっと訂正。通名、偽名のネーミングの際は、登場人物の命名以上に慎重にならざるをえないでしょう。
 こういったものが必要なかたがたには、ストーリーテリング以上のリアリティが要求されるようですから。




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