●2008年5月


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ねらっていけ! 5月31日


 先日、さる企業の社員総会なるものに参加する機会を得ました。
 経営方針や各種表彰など、お定まりの内容だったのですが、印象に残ったイベントがひとつありました。
 自薦でエントリーし、選抜を経て生き残った数組がパワーポイントを駆使しながら、自分が関わったプロジェクトの成功までの経緯を語るというもの。
 ま、ひとことで言うと仕事自慢ですな。一等賞にはいろんな副賞が与えられます。

 中身はともかく、プレゼンテーションの構成がほぼ同じというのには、ちょっとびっくりしました。
 苦労はしたけど仕事は大成功! でおしまいではなく、結びにクライアント企業の担当者からの礼状が挿入されるんです。
 すべてのプレゼンターがそうしているところをみるとフォーマットらしきものがあるにちがいないと思い、関係者に聞いてみると、そんなものはない、ということでした。昨年、一等賞をとったプレゼンテーションの構成を踏襲しているだけである、と。

 パクリとか独創性がないとか批判するのは簡単です。
 しかし私などは、外聞関係なしで賞狙いに懸けるプレゼンターたちの押し出しの強さに圧倒されてしまいました。プロジェクトの規模や価値という面では比較対照しにくいので、最後は聴衆の感情に訴えるというダサい手も辞さない姿勢にも、すがすがしいものを感じました。

 賞を狙うということは、こういうことかもしれません。

 ある文藝新人賞に応募するから読んでみてほしいという依頼が、年に数回寄せられます。
 長短硬軟いろいろありますが、読んでいて感じるのは、狙う気持がやや弱いんじゃないかということ。
 語り口やアイデアは文句なしなのに、募集のニーズからややはずれていたりするんですね。ニーズに合わせるよりも、自分の書きたいものを書いているという感じかな。

 これでは、完全に狙ってきている競争者に負けてしまいます。
 勝ち負けの世界と文藝の世界は別物だという意識がどこかにあるから、緩みが出てしまうのでしょう。
 書きたいものは、プロになってから書けばよろしい。とにかく最初のハードルを超えることです。
 本意でないものは書きたくない、読者におもねりたくない、などというナイーブな気持はしばし封印して、勝ちにいかなければ何もはじまりません。

 そして、勝つためには、研究が欠かせません。
 過去の受賞作ならびに選評を読み、ニーズを把握する。これくらい私にも書ける、と気を強く保つのも大切ですが、それよりも、受賞作のどこに価値があったかを謙虚に分析するほうが、はるかに得るものが大きい。

 見えないけれどしっかり存在する枠の中で、どれだけ発想を広げられるか、どれだけ独創性を発揮できるかというゲーム。
 勝ち抜けば、ワクワクすることが待っています。作家性とか藝術性とか、人が決めることをあれこれ考えていてもしかたありません。

 営業系企業のプレゼンテーション大会を眺めながら、こんなことに考えをめぐらせてしまいました。
 ヒントはいろんなところに転がっているものですな。




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