●2008年2月


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『スーパーサイズ・ミー』なんてレベルじゃねえぞ! 2月29日


 商売柄、得体の知れないモノや人に目がなくて、変なモノを見つけるとすぐに手を伸ばし、けったいな人と出会うとさりげなく観察したりするのが習い性になってしまっています。

 そんな私でも、食い物だけは別。得体の知れないモノを口に入れる勇気は持ち合わせていません。ヤバくなったら逃げる、というわけにもいきませんから。
 いきなり変なものが口に飛び込んでくるわけじゃなし、魔が差さなければ悪食とは一生無縁だと安心していました。

 ところが、げてものでもなんでもないニンジンやマッシュルームや冷凍ギョーザに毒物てんこもりだったとは!
 と、いちおう驚いたふりをしていますが、中華人民共和国の物産が、実はホットなブツだったいうことは先刻ご承知。
 えぐすぎる環境汚染のありさまをネットで知った日から“家庭内チャイナフリー”を実践してきました。

 昨年夏の発癌性うなぎ騒動などの業者や商社の拝金体質によるセコい事件は必ず露見するものですが、それより怖いのは、国を挙げての環境汚染がもたらす根の深さ。
 空気、水、土が汚れていては、そこからできるものは推して知るべしでしょう。
 ポジティブリストがあるからと安心はできません。加工食品はノーチェックですから、ポジティブリストにひっかかるようなヤバい食材は加工に回せば無問題、好好(ハオハオ)ということになるんじゃないかな? と疑っていた矢先に加工食品からめずらしい農薬が幾種類も検出されはじめています。
 有吉佐和子さんの長篇小説『複合汚染』がベストセラーになった時代を生きてきた者には、得体の知れない化学物質に染まった“腐海”のような大地からとれたものを口にする勇気はありません。

 自宅の近所に業務用スーパーなるものがあるのですが、ざっと見ただけでも食材の半分以上が中国製。とくに冷凍の加工食品がすごいことになっていました。
 焼鳥、唐揚、餃子、焼売、フライもの、ミックスベジタブル……。メイド・イン・チャイナがキロ単位でどーんですからね。
 飲食店の店員とおぼしき客をよく見かけましたよ。
 家庭の食事とは違い、飲食店では食材の素性を確かめることができません。いちいち店員に聞いたところで、疎ましがられるだけだろうし、また、本当のことを教えてくれるかどうかもわからない。

 家庭内チャイナフリーを始めてからというもの、外食嫌いに拍車がかかってきて、レストラン、居酒屋、弁当屋から完全に足が遠のきました。百貨店・スーパーの総菜売場も、もはや異国の風景でしかありません。

 ところが、安心できる国産品だけを口に入れて生きていきたい、というささやかな願いの前に、「付き合い」という名の壁が立ちはだかっています。
「話の続きは飲みながら」とにこにこ顔の相手に、毒を食わされる可能性があるなんてことは言いにくい。
 軽く言えば冗談と受け取られ、力説すれば電波の人と見られかねない。
 なんでこういう状況なのに、消費者団体とかBSE騒ぎのときに旗を振っていた人たちが大声を出さないんでしょうかねえ。ああいう人たちにとって、こういうときこそ存在をアピールするチャンスなのに。

 しかし、この毒ギョーザ・毒野菜事件を機に、外食の危うさが急速に浸透しているようですから、それほど気に病むこともありますまい。チャイナフリーの幟を立てる飲食店も次々に増えていくでしょうしね。
 それまでは、暴飲暴食がたたってドクターストップがかかったとでも言っておきましょうか。

 願わくは、酒豪・美食の友人知己が、この拙文に気づきませんように。




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