●2007年7月


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水が低きに流れるように 7月17日


 相原コージさんの四コマ漫画だったと思うのですが、何しろ一回しか見ていないので記憶が確かではありません。もし間違っていたら勘弁してください、と先に謝ってから話を進めます。

 内容はこうです。クイズ王決定戦のようなテレビ番組が、漫画の舞台。ディフェンディングチャンピオンはオタクっぽい青年で自信にあふれています。難度の高いクエスチョンが出されても、まったく動じずに一言。「知ってる」。ピンポーン! 全問この調子で、観客から尊敬のまなざしを浴びつつ王座防衛を果たします。
 不条理ギャグ漫画に食傷していたこともあり、笑いのツボにストレートに入ったことを懐かしく思い出します。

 こんなことを思い出したのは、最近の広告に検索窓風の図版を使ったものが目に余るようになってきたからです。
 ほら、検索窓におぼえやすい(かどうかは別として)単語またはフレーズが記されていて、マウスポインタが検索ボタンを差している、あの図案です。
 印刷物ばかりでなくテレビCMでも見かけるんですが、あれって表現のいちばん大切な部分を放棄してしまっているようで、目にするたびにバカにされているような気がして落ち着きません。
 いみじくもクリエイターを名乗るなら、ポスターなりCMなり与えられたメディアの中で勝負せんかい! と言いたくなっちゃうんですよ。話はそれからだ、と。

 WEBサイトへの誘導が目的なら、白地にぶっといゴシック体で、検索ワードだけ書いておけばいいんじゃないかと思います。それでも、あんなフレーズなんかよほど興味のある人でなければ覚えていられっこないから効果はいまいち。
 次の手は、煽るだけ煽ったあげく肝腎なことを書かず、「この続きは検索で」となるにちがいない。しかし、もうこうなると広告ではなくてバラエティ番組のたぐいですな。驚きの結末はCMのあと! ――もう倒錯の世界です。

「その場で心をつかむ、心に残す」ことに腐心してきたクリエイターたちの努力も、昨今の「検索」の席捲でチャラ。“作品”として成り立つ広告は、一部の見識あるスポンサーと頑固なクリエイターたちが一人占めすることになるかもしれません。世は格差社会と申しますが、こんな格差だったら大歓迎。格差がなければ、淘汰もないし、ひとしなみの世界から新しい表現なんて生まれませんからね。

 安易と端的の違い、受動と能動の差、過程と結果の取り違え。クイズ王の「知ってる」がもたらす笑いは、そのあやうい境界を衝いたからにほかならないと思えるのです。



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