●2007年3月


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マジック・アワー・イン・キョート 3月7日


 大阪に住んでいながら、プライベートで京都に赴くのは年に3、4度ほどでした。というのも、昔の規格そのままの街並に、その当時とは比較にもならない数の人があふれていて歩きにくいことこのうえなし、というイメージがずっとあったからです。

 ところが、このひと月、京都での取材が多く、嵐山、東山、河原町、京都御苑を駆け回っていたところ、京都もまんざらではないと思えてきたのです。というより、京都がかなり好きになってしまいました。
 年齢を経て、和の心、雅の味わいがしみじみ感じられるようなったというわけではありませんし、自分だけの隠れスポットを見つけたわけでもありません。
 街が持つ本来の姿に接することができたことが大きかった。これまで感じたことのない心地よさに気づいたんですな。

 やっぱりそれは年のせいだ、と言われるまえに、大急ぎで、状況を説明しておきましょう。
 この変節のきっかけは、早朝取材につきます。四条大橋東詰に午前9時集合なら、律儀な私は30分前に阪急河原町駅に到着。四条大橋をてくてく歩いて、午前8時40分には集合箇所で待機というのを習いにしています。
 そんな時間に観光客はほとんどいません。目につくのは、職場に向かう勤め人や営業車くらいのもので、街の空間は余裕たっぷりです。
 通行人とぶつかる心配もなく立ち止まって、ゆっくり街の風景が見られる。
 ほおお、南座はこうなっっておったのか、東華菜館の装飾は見事よのお、という発見の積み重ねという副産物が京都取材にはありました。
 しかし、取材を終えた昼下がりとなると、シーズンオフなのに人だらけ。私にとって鬱陶しい街が出現します。

 賑わいも味のうち、というかたにはまったく参考になりませんが、京都ならではのまったり感を満喫しようと思ったら、午前9時から11時くらいまでがベスト。

 人影まばらな渡月橋にたたずむと桂川のせせらぎと野鳥のさえずりが聞こえてきます。
 清水寺へと続く坂の情景は古人(いにしえびと)が目にしたものに近いはず。
 そして、京都御苑。建礼門に近づくにつれ、烏丸通り、丸太町通りの車の音も遠ざかり、玉砂利を踏む自分の靴音のみ。
 手垢のついた言葉で恐縮ですが、悠久の時間を感じるひととき――これが京都でしょう。

 私は、この時間帯を、“MAGIC HOUR in KYOTO”と呼ぶことにしました。団体旅行でないかぎり、ちょっと早めにチェックアウトして出かけてみませんか。国際観光都市という表現が軽薄に感じられるはずです。

 しかし、この「マジック・アワー・イン・キョート」には、なぜか年寄りの姿が多いんですなあ。それに、お散歩中の犬も。
 ひょっとして、私も年寄り側に近づきつつ……という不吉な連想は口にしない約束。

 とにかく、京都はシーズンオフの朝が狙い目。けっして派手ではありませんが、経験してみる価値は大ありですよ。



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