●2005年8月


「閑々随筆」トップへ バックナンバー インデックスへ




日曜だけど『ビッグ・ウエンズデー』 8月20日


 先月末の日曜日、和歌山の温泉旅館に行ってきました。

 太平洋を一望できる崖っぷちにコンクリート打ちっ放しの離れが4棟。
 大海原に面した側には壁の代わりに大きなガラスが入っています。客室はもちろん、檜の内風呂、お手洗い、そして専用露天風呂――見たくなくてもオーシャンビューという豪華な宿でしたよ。
 交通の便はお世辞にもいいとはいえませんが、そのぶん、のんびり静かに余暇が過ごせるというわけです。
 こういう個性的なお宿が増えるのはいいものです。浴衣をはだけた団体さんがゾンビのように館内を練り歩く大型温泉旅館にうんざりしている人にとっては朗報でしょう。

 ここまで読んできて、なんとなく温泉紹介記事のにおいを嗅いだあなたは鋭い!
 お察しのとおり、物見遊山で和歌山くんだりまで出かけたわけじゃないんです。
 撮影立ち会いを兼ねた取材――つまり仕事。オープンを間近に控えた温泉旅館の紹介記事を書くために、日曜日早朝に出発。いろいろありましたが、夕刻には無事に目的を果たし、帰途につきました。

 ふだん、海には縁のない暮らしをしている身には驚くことが多い一日でした。
 昼下がりは穏やかだった海が、午後には幾重ものうねりが押し寄せるようになり、岩礁に砕けては白い波しぶきを上げるさまは、これから東映の映画が始まるかのような趣。
 オーナーのお話では、颱風の影響だということでした。その颱風ははるか大東島の東の沖合にあったのですが、うねりは紀伊半島に達していたのですね。自然のパワー、恐るべしです。
 颱風が来たら臨時休業ですか、と無遠慮なことを聞くと、オーナーは不敵な笑みをうかべて言いました。

「颱風のときに、ぜひお泊まりいただきたいですね。波の凄さはこんなもんじゃありませんよ。地元の人も、颱風が近づくとわざわざ見物するくらいですから」

 なんとワイルドな、なんとスペクタクルな! 颱風上陸のときはさぞや……。

「あ、上陸時はだめです。雨風が激しすぎて、ホワイトアウト状態になっちゃいますから」

 いやいや、そういう光景だって十分見てみたいものですよ。
 颱風時は割増料金はやめてね、と念を押して現場をあとにしましたが、そもそも颱風が近づいているときに大阪から和歌山南端まで無事にたどり着けるものなのでしょうか。

 ひさしぶりに海を見たせいか、夜の帰路が退屈だったせいか、猛烈に海の映画が見たくなりました。
 劇場公開時にエンドロールの歌でずっこけて以来、封印しつづけてきたあの名作。要所要所に季節ごとのうねりが挿入された『ビッグ・ウエンズデー』がすぐに浮かびましたね。

 作品レビューは、次回にでも。







いいものは、いい。 8月29日


「作品レビューは、次回にでも。」なんて書いたものの、作品が大幅に変ってしまいました。不興をかうまえにお詫びします。ごめんなさい。
『ビッグ・ウエンズデー』がいくら名作の誉れ高しといえども、『マスター・アンド・コマンダー』という海洋冒険映画を前にしては、ややかすんでしまいますなあ。同列には論じられんだろ、というご意見はそこらへんに置いといて、いやあ、楽しませてもらいました。

 予告篇にはだまされるな! という声を公開時にさんざん聞いたような気がしますが、自宅鑑賞派のわたしには関係なし。それに、映像ネタバレ度の高い最近の予告篇は避けるようにしてますからね。
 原作じゃ敵はアメリカ海軍だろう、という声も無視無視。スパイの件はどうなったんだよお、というもっともな意見も今回は却下。

 海! 嵐! 男! 軍艦!

 暑気払いに、これ以上のものはありますまい。ピーター・ウィアーという監督は、古きヨーロッパの雰囲気を撮らせたら実力以上のものを発揮するようです。未見の方は、ぜひご覧ください。大勢のセリフが重なるシーンが多いので、日本語版が特におすすめ。緊迫感と臨場感が違いますよ。

 臨場感といえば、今回、おもしろいことに気づきました。
 これまでシアターセットなるもので映画を見ていたのですが、劇中で聴きごたえのある弦楽がかかるものですから、通常の2チャンネルアナログアンプとスピーカーに切り替えてみました。
 やっぱり艶がちがうな、とうっとりしていてサラウンドアンプに戻すのを失念。そのまま最後まで見てしまったのですが、サラウンド感に不足は感じられませんでした。音はきっちり回るし、移動感は自然。

 もちろん、真後ろから音が聞こえてくることはありませんが、このままでいいや、と思えるほどのクオリティは、まさに灯台もと暗し。幸せの青い鳥でした。
 ハイテク=ハイクオリティではない、ということは頭ではわかっているんですが、こういう体験でもしないかぎり、実感できないものです。ハイテクでもローテクでも、いいものはいい、ということでしょうか。

 ということを、ローテクな時代のおおざっぱな海戦を見ながら考えたわけです。
 敵の船影が見えるまでは、あれこれ心配してもはじまらないからひとまずまったり、という船乗りたちの姿勢にも教えられるところが大きゅうございました。

 通常ならこのあたりからITの功罪なんて話に論が進むんでしょうが、こう暑くては書くのも読むのも鬱陶しいのでこのへんで。

 いつか、ほんとに『ビッグ・ウエンズデー』やります。ご期待ください。




「閑々随筆」トップへ バックナンバー インデックスへ
Web Publishing AZUSA (C)2003-2018  All rights reserved.