●2005年2月


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●リカバリー・フィーバー● 2月19日


 ひさびさに発病しましたよ、リカバリー・フィーバーが。
リカバリー・フィーバーなんて、わたしが勝手に命名したものなんですが、ピンとくる方もいるのではありませんか。

 リカバリーとは、ハードディスクをフォーマットしたうえでOSを入れ直すという、あれ。
 Program Filesに格納していたアプリケーションがご破算になってしまう、あれ。
 育て上げたFEP辞書、メールのアドレス帳がぱあになっってしまう、あれ。
 パソコンが新品の時代に戻ったような気がする、あれ。

 調子よく動いているのに、あえてリカバリーをかけてしまいたくなる熱病。それが、リカバリー・フィーバーだ!
 べつに感嘆符までつけることはないんですが、熱病にちかい衝動に襲われることはありませんか。

 わたしにはあるんですよ。たいてい、まとまった休みのとれる盆、正月が迫ると、発症するようです。冷静さを装いながらデータをバックアップするのですが、実はその段階で脳がやられてしまっているんですね。
 いつぞやは、ブラウザのブックマークが電子の彼方に消えてしまい、頭をかかえるどころか、笑ってしまいました。

 そういう危険な衝動が、またまた出てきましたよ。先の年末年始は例年になく忙しかったため、熱病のことをすっかり忘れていましたが、年度末がひと月後に迫った今、ふつふつと衝動がふくらんできました。
 確定申告などの計算は別のマシンでやってるから問題なし。このマシンにはWeb Publishing AZUSAと仕事のファイルがあるだけ。もちろん、それらは「ばっくんちょ」(これ、なかなかいいソフトです)で毎晩バックアップしてあるから安心なうえ、Dドライブに格納していますからリカバリー関係なし。
 どうせ週末は雨だというし、いっちょやってみっか! ぱしっ、とわけもなく拳を掌に叩きつけ、バンカラ口調になったりするのも、この熱病の特徴のようですね。

 リカバリーが始まり、呪文のような英数字がモニターをスクロールするのを眺めているときは、なんとなく溜飲が下がるのですが、そのあとが地獄。
 こんなソフト、なににつかうんじゃい。カスタマイズと称して、なにええかっこしいしとるんじゃ。と自らを罵りながら、インストール&再起動&カスタマイズ&再起動……。これが数時間続くわけですね。

 このような苦労に懲りることなく、なぜ、何度もやっちゃうんでしょ。
 人類の歴史は戦争の歴史だ、なんて人類の代表のようなことは言いません。またまたことばを勝手に作って恐縮ですが、言うならば、「リセット欲」というものがあるような気がするんです。

 この「リセット欲」、わたし固有のものではなく、日本人特有のものではなかろうかと愚考するしだい。節目節目で、すぱっと過去を捨てるその潔さといったら。
 最近では、太平洋戦争の終戦が大きな節目でしたな。GHQの占領地政策もありましたが、むしろ、日本人のほうから、それまでの文化を性急になげうってしまったようです。
 それがよかったのかわるかったのか、たかだか60年の歳月しかたっていない今では判断しかねますが、やや先が見えてきたようなそうでないような……。

 おっと、ここまで考えるのは大袈裟というもの。リカバリーと国家百年のありようを同列に論じることはできませんな。
 でもねえ、いわゆる「リセット欲」というものは、けっして目新しい概念ではないようですよ。ほら、ケツに火のついた政治家の常套句、「みそぎ」。これなんかは、体のいいリカバリーだと思います。いや、偽装リカバリーかな。ハードディスクが真っ白になるわけじゃありませんから。

 こんなことを考えてると、なんだかリカバリーしようという気が萎えてしまいました。
 よかれあしかれ、連綿と築き上げてきたものを一瞬でちゃらにしてしまうというのは、ちょっと大胆すぎるようです。明るいパソコン環境がやってくるという確信がなければ、やるもんじゃないですよね。

 パソコン歴5年にして、分別らしきものがようやく身につきはじめたようです。リカバリーはやめました。
 この週末は、雨の音を聞きながら、本でも読んで過ごすとしましょうか。




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